停留精巣と赤ちゃん
一般的には、赤ちゃんの精巣は、次のようにして陰嚢の中へおさまります。
1.妊娠2ヶ月頃:生殖腺が精巣へと成長する 2.胎児の時期:お腹の中 → 鼠径部(足の付け根) → 陰嚢への降りてくる |
しかし、赤ちゃんの中には、生まれた後も、陰嚢の中に精巣が入っていないことがあり、その状態を「停留精巣」と呼びます。
「停留精巣」には、次のような特徴があります。
1.男の子の先天的な異常の中で最も多い 2.生後6ヶ月までに、通常は、自然下降して陰嚢に入る 3.1歳以降は、通常は、自然下降はない |
なお、赤ちゃんの停留精巣の割合は、次のようになっています。
生まれた直後:3~5% 1歳時:1~1.5% |
在胎37週未満で早くに生まれた赤ちゃんや、2500g未満の低出生体重児の赤ちゃんの場合は、停留精巣の頻度も高くなりますが、1歳頃には、通常の頻度と同じ程度になります。
赤ちゃんの停留精巣のタイプ
赤ちゃんの陰嚢を注意深く触れば、精巣に触れているかどうかで、「停留精巣」かどうかを、判断できます。また、停留精巣は、停留精巣の状態により、いくつかに細分化できます。
まず、左右の精巣の触知の状態で、次のように分けられます。
両側性の停留精巣:両方の精巣を触ることができない 片側性の停留精巣:片方の精巣を触ることができない |
また、陰嚢内だけでなく、足の付け根のあたりでも精巣を触れない場合は、次のように呼ばれます。
触知停留精巣:精巣を足の付け根のあたりで触ることが可能 非触知精巣:精巣を足の付け根のあたりでも触ることができない |
非触知精巣の場合、腹腔内や鼠径管内といった、かなり奥の方に精巣が入っていたり、精巣がなかったりする場合もあります。
赤ちゃんの停留精巣と「移動性精巣・遊走睾丸」の違い
2歳ぐらいから小学生までは、陰嚢で精巣を触れることができたり、できなかったりすることがあります。これは正常の状態で、「移動性精巣・遊走睾丸」といいます。
「移動性精巣」は、次のような状態のために起きます
1.精巣は足の付け根のあたりから、筋肉でぶら下がっている 2.緊張すると、筋肉が収縮して鼠径部の方に持ち上がる |
「移動性精巣」は、持ち上がっているだけなので、リラックスしているときは陰嚢に戻ります。そのため、お風呂に入っているときなどに、精巣を確認できれば、問題ありません。
停留精巣の一般的な治療
停留精巣は、6ヶ月までは、自然下降する可能性もありますから、放っておいても大丈夫です。しかし、1歳以降は、自然に精巣が降りてくることはほぼないため、「小児泌尿器科」で診察を受けます。
一般的には、1歳~2歳の間に、手術をすすめられることが多いです。
手術は、日帰り~1泊2日程度で行いますが、次の2つのタイプにより、手術の手順が異なります。
1.触知できるタイプ(触知停留精巣):足の付け根あたりで精巣に触れることが可能 2.触知できないタイプ(非触知精巣):精巣に触れることが困難 |
触知できるタイプの停留精巣の場合、次のような手術で、1時間~2時間程度で終わります。
1.下腹部を2~3cm切って、精巣を見つける 2.周囲とくっついている血管・精管・筋肉を丁寧にはがして陰嚢まで届くようにする 3.吸収される糸で縫うため、抜糸は不要 |
触知できないタイプの停留精巣の場合、精巣がなかったり、精巣が極めて小さい場合もあるため、はじめにお腹を内視鏡で検査してから、手術を行います。
停留精巣の一般的な手術費用
基本的には、市町村で赤ちゃんの医療費は全額補助が出るので、医療費はほぼかからないです。ただし入院した場合は、別途、次のような費用がかかる場合があります。
ベッド代 食事代 個室の場合は個室代 |
かかったとしても、1泊で5000円程度です。